今回は、以前の記事で触れた、初期聖子サウンドのフォロワーたちのうち、その特徴を本家以上に体現したフォロワーについて語る。
目次
初期聖子サウンドとは
以前の記事と重複するが、まず、筆者の考える、初期聖子サウンドの定義をまとめておく。
「裸足の季節」から「夏の扉」*1くらいまでのシングル曲に共通する下記の特徴を持ったサウンド
- 可愛らしく明るく溌溂としたメロディ
- ロックバンド構成を基礎に、アコースティック楽器と上品なシンセサイザーを取り入れた楽器編成
- 爽やかなコーラス
- AORやフュージョンの影響を受けたハイクオリティなアレンジと演奏
異論のある方もいるだろう。聖子のあのパワーボイスも含めて初期聖子サウンドではないかと。
だが、上の挙げた特徴は、フォロワーである女性アイドル達の少々稚拙な歌唱を稚拙だからこそ魅力的に見せる魔法の力を持っている。ある意味では聖子以上に。
筆者はそれに惹かれ、その魔力を持ったサウンドを「初期聖子サウンド」と呼ぶことにしたのだ。
名盤『待ちきれなくって・・・』
その初期聖子サウンドを全面的に、本家以上に取り入れたのが新井薫子のファーストアルバム『待ちきれなくって・・・』だ。
そのサウンドははっきり言って松田聖子の初期のアルバム『SQUAL』や『North Wind』より、ずっと「初期松田聖子」している。「全曲聖子ちゃんのシングル風でお願いします!」って発注したのではないかと疑うくらいだ。マイナー(短調)の曲が一曲もないのが、メジャー好きの筆者としてはポイントが高い。爽やかさと疾走感のある、初期聖子サウンドの神アルバムである。
彼女の歌は下手ではないが上手くもない。正直あまり魅力のある歌声や歌い方とは言えないが、だからこそ初期聖子サウンドの魔法の効果が大きい。
筆者のお勧めはB面ラスト、ディキシーランド風編成の「 バイ・バイ・イエスタディ」。明るくて切ない、アイドルのアルバムラスト曲のお手本だ。アレンジは大村雅朗。本曲も含めアルバムの半分の曲のアレンジを担当*2*3。松田聖子サウンドのキーパーソンの一人であり、前述の発注内容も妄想ではなさそうだ。。
残念なことに、彼女の音源は過去1曲もCDで発売されていない。音楽配信ももちろんない*4。。版元のTDKレコードが事業撤退の際にマスターテープを紛失したとの噂だが、同様の境遇にあった徳丸純子がレコード音源を元にCD発売できたのだから何とかしてほしいものだ*5
*2:作詞・作曲・編曲者のリストは以下のサイトを参照
*3:本来なら全曲レビューをすべきなのだろうが、10曲分の読ませるレビューを書ける筆力がない(笑)。
*4:YouTubeを定期的に巡回していると奇特な人が稀に全曲を。。。その時を待つのじゃ
*5:徳丸純子のセカンドアルバム『青のないパレット』は隠れた名盤だ。全曲清水信之による、新井薫子とは真逆のテクノアレンジ。特に大貫妙子作の「横顔」は彼女のぶっきらぼうな歌声に合って心に沁みる。本CDは全曲集ではないが同曲は含まれているので興味のあるかたは是非ご購入検討を(笑)。ちなみに本曲も含め、つちやかおりの「紅い糸」「つむじ風」など、大貫妙子にはアイドルが歌って映える曲が多い。