物語論の完結編です。物語の未来を妄想考察します。全体の目次はこちら。
前回まででこれまでのででんぱ組の物語についての考察を終えた。
では、これからのでんぱ組の物語はどうなるのだろうか。
感動の物語を味わうことができるのであろうか。
今回は少し特殊なアプローチでそれを考察してみる。
「でんぱ組」「続・でんぱ組」
第1回目の武道館で解散すれば伝説になれたのに、とはねむさん*1を含む複数の人が述べている。つまり、1本のストーリーとしてよく出来ているということであり、映画で考えると、1本の映画として完結しているということになる。
筆者は、そこからみりんちゃん結婚までをその続編(パート2)だと考える。
前回説明したように、この時期にでんぱ組は危機を迎え、そして再生した。パート1における成功者が危機を迎え復活する。映画のパート2においてよくある筋書きだ。
また、この時期の後半、でんぱ組には「えいたそのプリキュア主演声優抜擢」「みりんちゃんの結婚」など、メンバーにとっての幸福な出来事が続いた。
これも映画のパート2の常套手段だ。パート1での各種設定を伏線とみなしハッピーエンドに終わる形で回収することで、物語の深み、そしてパート1のファンに至福感をもたらす。
映画のパート2であるという意味がご理解いただけただろうか*2。
ではなぜ、みりんちゃん結婚がパート2の終わりなのか。
でんぱ組の物語の主人公をみりんちゃんとするならば、欠落のある主人公が物語の過程で成長を遂げ、欠落を埋める象徴を手にする、ここを物語の一区切りとすることは、みりん推し以外の方もある程度同意いただけるのではないだろうか。
アプローチ
本稿では、これまでのでんぱ組の歴史を映画のパート1、パート2に見立てた上で、続編の続編(パート3)のあるべき姿を考察することで、でんぱ組の物語の将来展望とする。
何て変てこなやり方だ、と思うだろう。しかし、正編(パート1)が終ったときに古参のファンの方々はパート2の内容、そして伏線がこれほどまでに見事に回収されることを想像できただろうか?
現在の延長線で考えるより、どうしたら物語として完成度が高まるかを考える方が真実に近づける。そう思わせてくれるのがでんぱ組であり、でんぱ組の物語の魅力である。
考察にあたって2つの前提を設ける。
まず、主人公はみりんちゃんとする。これに同意できない人は、そもそもここに至るまでに読むのをやめているだろう。
2つ目の前提は、パート3を完結編とすることだ。3部作の映画には名作が多いということなので、それにあやかりたい*3。
「でんぱ組 完結編」
完結編はどうあるべきか。
結論から言う。「アイドルの地位向上」を実現して終わらなければならない。
これはみりんちゃんが「それが出来たら死んでもいいかな」とまで言い切っている夢である(下記記事参照)。
みりんちゃんの結婚・活動継続で「アイドルの地位向上」の風穴は開けたかもしれないが、あくまで点でしかない。筋書きはどうであれ、それが線・面に広がっていくことを観客に見せる、少なくとも示唆しなけばならない。これが完了条件だ。
観客は主人公に感情移入する。主人公の夢が叶うからこそ、物語は真に完結することができるのだ。こんなきれいな物語の完結の仕方があるだろうか。まさに「でんぱ組トリロジー」の完成である。
紅白出場やコンサートでのフライングもみりんちゃんの夢ではあるが、それぞれ武道館やフリーフォール(笑)のスケールアップ版にしか過ぎず、完結編の完了条件とはなり得ない(もちろんやってもいいが)。
完了条件が満たされた上で、これまでの設定を伏線として幸せな形で回収すれば物語として完璧だ。大人組の結婚*4や、もがちゃんとの再会*5などが挙げられるだろう。
むすび
ファウンダーの1人である「もふくちゃん」はパート1の渦中において、「世の中が物語を求めているのなら、物語を作らないといけないと思う」と述べた*6。
確かにパート1は「作ら」れたものだと言える。しかし、パート2の物語は、誰かが書いたシナリオではなく、紛れもなく彼女たちの創発による作品だ。彼女たちの一挙手一投足が物語を紡いでいくのだ*7。
短期的に見れば、理不尽なことや、イライラさせるようなこともあるだろう。だが、後から振り返ってみると、それらは物語にとって必要なピースとなっている。パート2はその証明だ。
緒についたばかりの完結編もそうなってほしい。いや、そうなるにちがいない。
我々の採るべきは、大団円を期待しつつ、焦らず彼女たちの言動、そしてパフォーマンスを味わっていくことだろう。
彼女たちも言っているではないか。
きっとこの願いは叶うはずだよ♡
だって私たちはでんぱ組.incだもの
と。
脚注
*1:『でんぱ組.inc、ベスト・アルバムをハイレゾ配信!夢眠ねむソロ・インタビュー! - OTOTOY』
*2:世の中に復活や再生の物語はあるにしてもこれだけ伏線がきれいに回収された例は稀有ではないだろうか。
*3:ちなみに筆者は映画はほとんど見ないので、ここまで書いたことは、数少ない映画体験とネットの情報に基づくものだ。見ると言ったら、飛行機などの長距離移動中や、家族の付き添いくらいである。あ、スタプリの映画は映画館に見に行った、1人で(笑)。
*4:特にえいたそ。インスタストーリーズであんなことやこんなことを呟いていた彼女であるからこそだ。もしその報告を聞いたら筆者はうれしくて1週間くらい正気ではいられる自信がない。ブログを何度も更新してしまうだろう(笑)
*5:特にもがちゃんとみりんちゃんが同じフレームに笑顔で映ったりしてくれただけで、もう筆者はうれしくて(以下同文)
*6:『「物語性の先に辿りつきたい」でんぱ組.incのプロデューサー・もふくちゃんが語るアイドル論 - Real Sound|リアルサウンド』
*7:2020/4/25追記)
彼女たちの創発によるものであることは、みりんちゃんの次の言葉からも明らかだ。
古川 私、実は今言われるまで自分たちがドキュメンタリーを見せてるって気付いてなかった。特に去年は自分のことで精一杯で、ひたすら悩んでて周りが見えてない状況で。それぐらい一生懸命やってきた結果、自分でも気付かないぐらいリアルなドキュメンタリーになってたのかも(笑)。
『でんぱ組.inc「愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ」インタビュー|今だから歌える愛の形 (3/3) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー』