ほぼ「でんぱ組」論です。全体の目次はこちら。
キーワード:スタートアップ企業でんぱ組、プロジェクトマネージャー、2人のファウンダー
目次
前回、でんぱ組の物語を深く真正なものにしている特殊性が2つの「本物」であると述べ、第1の「本物」である、その「キャラクター」を説明した。
今回は、もう一つの「本物」である、その「成り立ち」について論ずる。
ディアステージが育んだもの
でんぱ組を語るときに忘れてはならないのは、初期メンバーであるみりんちゃん、りさちー、ねむさん、えいたそ、みぅ*1がディアステージというコンセプトバー(で合っている?)のスタッフ出身である点である。
ディアステージの目玉として開催される、ライブやイベントなどの各企画はスタッフによるプロジェクト制である。担当のスタッフはプロジェクトマネージャーとして企画に対し自身のアイデアや感性を発揮でき、同時にその収益についても責任を持つ。ねむさんは、それが自分たちの精神を形作ってきたと振り返る*2*3。
プロジェクトの成否はその日の売り上げに即座に現れる。それを踏まえ次回のプロジェクトを改善する。いわゆるPDCAサイクルを繰り返すことで、彼女たちが元々の資質として持つ独立心・自主性・セルフプロデュース力を加速的に高めていった*4*5
でんぱ組は、このような独立心・自主性・セルフプロデュース力に富んだプロジェクトマネージャー達の寄り合い所帯という性格を持つ*6。
2人のファウンダー
でんぱ組の成り立ちにおいて、もう一つ重要な点がある。
よく知られているように、みりんちゃんがアイドルをやりたいと言ったから、もふくちゃんがプロデューサーになったのだ。逆ではない。
アイドルを始めた当時、みりんちゃんともふくちゃんはまさに二人三脚で試行錯誤しながら活動を進めていった*7。2人は「でんぱ組.inc」というスタートアップ企業のコファウンダー(共同創業者)なのだ。言ってみれば、ソニーの盛田昭夫と井深大、そしてAppleの2人のSteveのような存在である。例に挙げた企業でもわかるように、ファウンダーの性格はその企業の精神を形作り、精神的支柱そのものとなる。
上述したように寄り合い所帯であるでんぱ組は絶えずバラバラになろうとする力が働く*8。そのようなグループの求心力となるのが2人のファウンダーである。もふくちゃんは音楽やファッション面でのコンセプトで、みりんちゃんはアイドルに対する求道的な精神でメンバーを引き付ける*9*10 。
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今回、でんぱ組を次の特徴を持つスタートアップ企業に見立てた。
- でんぱ組は個性の強いプロジェクトマネージャーの寄り合い所帯
- その出自ゆえ絶えず働くバラバラになろうとする性質をまとめるのが、もふくちゃん、みりんちゃんという2人のファウンダーの求心力
これは一種の組織モデルともいえる。次回に続く2回は、この組織モデルを用いてでんぱ組の歴史を再解釈することで、本モデルの妥当性を示すとともに、なぜそれがでんぱ組の物語に真正性を与えるかを論じたい。
脚注
*1:この中でえいたそが何となく疎外感があるのは筆者の気のせいだろうか。ディアステージ入店が後だからか。それとも既婚者・彼氏持ちととそうでないえいたそとの間の壁。。。
*2:『MARQUEE Vol.130』「夢眠ねむ卒業記念超アキバ対談 夢眠ねむ×福嶋麻衣子 ディアステージ、でんぱ組.inc前夜」p.26
*3:ビジネスを強く意識したメンバーの集まりだから、ある意味「でんぱ組.inc」ではなく「でんぱ組 inc.」が正しいのだ(『吉田豪ともふくちゃん でんぱ組.inc『Kiss+kissでおわらない』を語る』参照)
*4:でんぱ組のメンバー、特に大人組に意識高い系女子の印象を受けるのはもっともなのである
*5:初期メンバーではないもがちゃんも、ボカロコスプレによるインディペンデントなタレント活動を通じて、ディアステージという母体はないものの同様の経験を積んでいると思われる。
正直なところ、もがちゃんが100%1人でこの活動を行っていたと筆者は信じきれていない。。。
*6:もがちゃん脱退のことを、でんぱ組をよく知る音楽評論家2人が揃って「バンドからの脱退」に例えているのは、この成り立ちを熟知しているからだろう。
『でんぱ組.incは「バンドに近い価値観を持ったグループ」? - Real Sound|リアルサウンド』
『でんぱ組.incから最上もが脱退。所属事務所・ディアステージ株式会社に聞く今後(宗像明将) - 個人 - Yahoo!ニュース』
*7:『続・でんぱブック―でんぱ組.inc』「でんぱ組.incの発起人にして初代プロデューサー、『今、でんぱ組に必要な事』を大いに語る。」
*8:みりんちゃんはその状態を次のように語る。
正直、同じ方向性を持つことも出来るけど、でんぱ組ってそうじゃないなって。この食い違っている感じが、モノを生み出せる力になっているんじゃないかなって思う私もいて、そういう部分に関しては、同じ方向性を保つ必要は無いと思っています。
『でんぱ組.inc 古川未鈴『WWDBEST ~電波良好!~』リリース単独インタビュー | Special | Billboard JAPAN』
うーん、やっぱりすごく個性が強い6人が集まったグループなので……なんと言うか、みんなそれぞれ違う意見や方向性を持っていて、私は別にそれでいいと思うし、以前から言ってるけどバラバラなくらいのほうがグループとしては面白いと思っていて。
『でんぱ組.incインタビュー|新体制でライブ再始動、古川未鈴が胸中語る - 音楽ナタリー 特集・インタビュー』
*9:前述の企業で敢えて例えれば、もふくちゃんが盛田昭夫/Steve Jobs、みりんちゃんが井深大/Steve Wozniakに相当する
*10:みりんちゃんともふくちゃんを共同創業者に見立てて、2019年初夏の2人の対談記事を読み返してみてほしい。2人の一言一言、写真の1枚1枚に味わい深いものがあるはずだ(笑)。