弥紀のblog(仮)

アイドル、特にでんぱ組に関する妄想を語ります。twitter(@yaki2019)で記事の正式リリース告知および近況を呟いています。

でんぱ組 物語論(5)2つの「本物」-4 本物の成り立ち

物語論の分析・考察の最終回です。全体の目次はこちら

キーワード:未鈴の覚醒、戦友から家族へ

 目次

覚醒期 

この危機において、それまでファウンダーであるにも関わらず、その性格から積極的なリーダーシップを発揮することを避けてきたみりんちゃんが覚醒*1、求心力を発揮しはじめる(下図の状態)。

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2017年に卒業発表の予定だったねむさんを引き留め*2、新メンバーを受け入れグループを継続することを覚悟を持って決断したのだ。

メンバーがそれを支持し従ったのもファウンダーの決断であるからこそだろう。逆にみりんちゃんがファウンダーでない、あるいはファウンダーとしての決断をしなければでんぱ組は解散あるいは自然消滅していたに違いない*3

 

再生期

新メンバー2人の加入は、もう一つの影響をグループにもたらした。

これまでそれぞれがプロジェクトマネージャーであるメンバーが互いに切磋琢磨し成長してきた。極論するとメンバーの間は自立した大人の関係であった。

しかし、一回り年の違う新メンバーを短期間でスキル向上させ、グループに溶け込ませるという課題に直面することで、新たな関係性が生じる*4。すなわち、既存メンバーは新メンバーを慈しみ、新メンバーはそれに応えるという関係性である。

メンバーはその関係性を「家族」と表現する*5。これが最近のグループのキーワードである「家族」「ファミリー」に繋がる(これについては別途触れる予定)。

そういう意味で、大阪城ホールでのライブは単にメンバーが増え、活動再開しただけではない。このライブはグループの再生を象徴し、でんぱ組のサクセスストーリーの第2の山場なのだ。それと同時にメンバー、特にみりんちゃんのファウンダーとしての成長の象徴でもある*6

 

以上、「2人のファウンダー」モデルを用いてでんぱ組の歴史を再解釈してみた。

このモデルのポイントは、みりんちゃんを共同創業者として位置づけている点だ。この位置づけによって「のみ」、でんぱ組の特に2016年以降の動きを的確に理解できると筆者は考える。敢えて歴史の再解釈に行を費やしたのはそのためだ*7

 

「本物」の成り立ち

これまで説明したようにでんぱ組において、ファウンダーがメンバーであり、プロジェクトマネージャーがメンバーなのだ。これはプロデューサーや運営が主導する他のアイドルグループとは明らかに異なっている。でんぱの神神での印象もあり、もふくちゃんが主導しているようにも見えるが、役割分担としてメンバーがプロデュースを任せていると考えるのが妥当だ*8

その成り立ちゆえ、でんぱ組のメンバーは能動的かつ自立心に溢れ、その言動は覚悟に基づく迫力を帯びる。メンバー間には迫真の関係性が生まれ、その関係性によって紡がれる物語は真正性を獲得するのだ。

それらを生み出す源である、活き活きとしたグループの成り立ちを筆者は「本物の成り立ち」と呼ぶ。これは当初挙げたでんぱ組を特徴づけるキーワード「本物」のもう一つの要素である(『でんぱ組 物語論(2)2つの「本物」-1 本物のキャラクター - 弥紀のblog(仮)』参照)。

 

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今回ででんぱ組の物語の考察を終える。その結果は以下のようにまとめることができる。

  • でんぱ組の物語は「サクセスストーリー」「個人の成長・成功物語」「友情物語」という3種類のサブストーリーで構成される。
  • 物語の感動は、それぞれのサブストーリーが有機的に結びついた同時代性のある群像劇であることに由来する(キーワード:「生きづらさ」「承認欲求」)。
  • 物語の真正性は、能動的かつ自立心に溢れる登場人物同士が生み出す迫真の関係性によって物語が紡がれることに由来する(キーワード:「プロジェクトマネージャ」「2人のファウンダー」)。

筆者の当初の目論見であった、なぜでんぱ組の物語がここまで自分を引き付けるのかの考察はひと段落着いた。

なお、これは筆者の解釈(=妄想)に過ぎない。皆さんには皆さんのでんぱ組があるだろう。是非それを公開してほしい!*9

 

次回は今後のでんぱ組の物語を考察する。 

yaki.hatenablog.jp

 

脚注

*1:みりんちゃんはそれを次のように述べる。

私自身は「腹を割って話し合おうよ」とかそういうの大嫌いで(笑)、「細かいことはいいじゃん! とりあえずやろうよ!」っていうタイプなんですけど、珍しく話し合いにも参加して。

でんぱ組.incインタビュー|新体制でライブ再始動、古川未鈴が胸中語る - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

りさちーもこう語る。

今回の会議でみりんちゃんが実は熱い人なんだって再確認w恥ずかしがり屋なんだよね。

でんぱ組.inc 相沢梨紗オフィシャルブログ「2.5次元伝説!」Powered by Ameba -7ページ目

話し合い中の写真がいい。5人しかいないが。。。

*2:でんぱ組.inc・夢眠ねむの卒業&引退、古川未鈴が「辞めんな!」と引き止めていた | オールナイトニッポン.com ラジオAM1242+FM93

*3:2020.02.27追記)

アルバム「ワレワレハデンパグミインクダ」のジャケットはその象徴だ。みりんちゃんはそれまでも中央にいたが、本ジャケットでは一歩踏み出しており、グループの精神的中心であることも示している。

ワレワレハデンパグミインクダ (通常盤)

ワレワレハデンパグミインクダ (通常盤)

 

*4:もがちゃんとピンキーの加入時は既存メンバーのスキルもグループへの関与度も低かったため、課題は表面化しなかったと考えられる。

*5:おそらく「家族」という単語が出てきた最初はりさちーのこの発言ではないだろうか。本当に繊細で聡明な人である。

うん、みんなで一緒にいて楽しいし、なんでも話すし、なんか家族みたいだなって思うんですよね。

中略

たぶん戦友って思ってたときは6人それぞれが戦友を求めてて、一緒に戦う仲間が必要だったんですよね。

でんぱ組.inc「プレシャスサマー!」「COSMO TOUR2018」インタビュー|リーダー相沢梨紗が語る「家族みたいな7人」の現在 (3/3) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

*6:だからこそ、大阪城ホールでの復活ライブは尊いのだ。神懸った構成や演出だけでも十分楽しめるが、公演時には知られていなかった上記の背景を踏まえてDVD/Blu-rayをぜひもう一度見てほしい。

ねぇもう一回きいて?宇宙を救うのはやっぱり、でんぱ組.inc! (初回限定盤)[DVD]

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*7:もちろん書きたかったからだ(笑)

*8:そのことはもふくちゃんの次の発言からも伺える。これは同性かつ「おとな組」と年代が近いという点も大きい。

もふくちゃん : やっぱり5年間、虹コンとベボガ!をやって、すごく私も勉強になって。でんぱはやっぱり同じ目線で一緒にやってたから、ある意味振り回せたんですよ。

新しい時代に、新しい刺激とワクワク感を! でんぱ組.inc 古川未鈴 × もふくちゃん座談会 - OTOTOY

*9:AKBやももクロにはその魅力の考察が満ち溢れているのに、なぜでんぱ組にはほとんど無いのか?無いから自分で作るしかない。それが本ブログの開設理由の一つである(笑)。