Amazon Music Unlimitedの「今週のディスカバリー」に、ある日、見たことも聞いたことのないグループ名の曲がリコメンドされた。それが「染脳ミーム」との出会いだった。
リコメンドされた「薔薇の棘、スカート破れた」を聴いてみる。
何か耳に残る。
早速、自身のプレイリスト「いい曲かも」に登録した。このプレイリストは、楽曲の良し悪しのスクリーニング用であり、合格すると「いい曲」あるいは「いい曲一歩及ばず」に昇格する、というシステムだ(馬鹿だね)。
何度か聴いた結果、見事「薔薇の棘、スカート破れた」はパスした。いや、そんな上から目線の言葉は不適切だ。当該曲だけでなく、その音楽的魅力に取り憑かれてしまったのだ。
そう、今回は「染脳ミーム」の楽曲の魅力について語りたい*1。
目次
楽曲の魅力
染脳ミームの楽曲は次のように特徴づけられる。
プログレッシブロックのような奇抜で劇的な構成とアレンジ。合唱練習曲集であるコールユーブンゲン*2のように、音程の跳躍が激しく、譜割りも裏拍を多用したテクニカルな、それでいてエモーショナルなメロディ。
それらはすべて、彼女たちの少年少女合唱団を思わせる真っすぐでイノセントな歌声とマッチし引き立てている*3。この手の前衛的なサウンドの曲はメロディが禁欲的*4、はっきり言えば添え物なことが多いが、染脳ミームのメロディは例外だ。
とにかく一度聴いたら、頭にメロディが残り、もう一度聴きたい欲求にかられる*5。「染脳」とはよく言ったものだ。
ライブパフォーマンスは?
こんなテクニカルな曲、ライブじゃまともに歌えず、気まずいものになるだろう。
そう思い、怖いもの見たさでYouTubeに上がっている映像を見ると、意外に形になっていることに驚いた。以下のビデオではミントグリーン、紫、黄色の娘は歌えている。
特にミントグリーンの娘(夏目鳳石というらしい )は、何らかの素養があるのではと思わせる。
染脳ミーム「The Last-Magic」2020.2.8 最終公演『感染後期』
楽曲リリース状況
現在までに『Epidemic』『Endemic』『Pandemic』の3枚のアルバムをリリースしている。1枚目の『Epidemic』の収録曲は『Pandemic』にすべて含まれているため、『Endemic』と『Pandemic』を聴けばよい。
『Pandemic』はコンセプチュアル、『Epidemic』はポップ寄りという色分けになる。どちらも聴いて損はしないと思う。
むすび
脚注
*1:当初、「サブスク音楽生活 2019年後半の気付き(4)個別論ー1 染脳ミーム」というタイトルにする予定だったが、これほどまでの情熱をもって記事を書けるのが他になかったのので単体記事にした。
*2:コールユーブンゲンといえば、曲集の一曲に歌詞をつけた戸川純の「憂悶の戯画」が思い浮かぶ。ちなみに、同曲の含まれるアルバム『玉姫伝』に作詞で参加している佐伯健三氏は、でんぱ組の創成期に関わりのあったサエキけんぞう氏である。でんぱ組は80年代サブカルの直系であることを改めて感じる。
*3:グループのプロデューサーであるマモル氏は、以前ゆるめるモ!でも似たようなサウンドの曲も手がけているが、このサウンドは染脳ミームの方がマッチしていると思う。染脳ミームを先に聴いたせいもあるが。
*4:ちなみに、筆者は「つまらない」「面白くない」を婉曲的に表現するのにの「禁欲的」を使っている(笑)。
*5:欧米での研究によると、頭から離れない曲の特徴の一つはメロディの跳躍の大きさがあるらしいので、それも一因だろう。