前回の記事を「でんぱ組の物語は更新され、W.W.Dによる感動を伝説にした。」と意味深に締めくくった。本稿ではこの点について説明したい。
W.W.Dの呪縛
でんぱ組の人気は、これまでW.W.Dの物語に大きく依拠していた。
W.W.Dの物語とは、地下アイドルだったでんぱ組が、マイナスな過去をバネに武道館までたどり着くまでのサクセスストーリーをその代表曲の名称を借りて名付けたものである。
筆者はリアルタイムで体験していないが、ソロツアーでの独白や武道館のライブをビデオで見るとその感動を追体験できるし、その当時のファンの熱狂ぶりももっともだと感じる。
しかし、W.W.Dの物語の延長線上で次のステージに進むには限界があったようだ。物語の新鮮さも薄れ、メンバーたちの成長に伴い実態とも乖離し、ある種の停滞期を迎えた。
グループの物語を更新しない状態では、楽曲の新路線への展開さえままならない。名盤「GOGO DEMPA」に対するAmazonでのネガティブなレビューの多さは、レビュー内容にあるようにファンの期待するW.W.Dの物語と楽曲とのギャップが大きいことに起因すると思われる。
結局、W.W.Dの物語を体験し、感動した多くのファンにとって、その物語に沿っていない、地下アイドル臭のないGOGO DEMPA以降の楽曲はでんぱ組らしくないのであろう。
物語で急成長したグループであるため、その物語に縛られてしまったのだ。
神話としてのWWDBEST
だが、でんぱ組のスタッフは賢明だった。リノベーション期間を設けたのがそれだ。いくつかの考察で見られるように、2018年に夢眠ねむ卒業、新メンバー加入を通じて、新しい物語を積み上げていく計画だったのだろう。
そこにもがちゃん脱退が起こり、計画との齟齬が生じた。しかし、結果的にこれが功を奏した。
W.W.D物語を構成する主要アイコン*1がいなくなったことに加え、W.W.Dシリーズを封印せざるを得なくなったためである。
このことによって、W.W.D物語と現在を直接繋ぐ経路が断たれ、ファンの記憶の中で、W.W.Dの物語は美化され、伝説となる。
もちろん、W.W.D以上の新たな感動によって物語を更新することが前提であり、でんぱ組はこれを見事にやり切った。筆者は、前回これを「W.W.Dの感動を伝説にした」と表現したのである。
伝説を伝説として継承していくためには、そのためのツールが必要である。宗教であれば神殿だったり神話がそれに相当する。
W.W.D伝説における継承のツールはWWDBESTである。WWDBESTは、聴く人の脳内で、W.W.Dシリーズを含むW.W.Dの物語が昇華された形で再現されるようなつくりとなっている*2。
そう。WWDBESTは神話なのだ。もがちゃんもその中で永遠に生き続ける。伝説の神の1人として。
ねむさんがアイドル人生最後の曲にWWDBESTを選んだのはそういう意味がある。天才の仕業としか言いようがない。
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新しい物語に向けて
でんぱ組の物語の更新は今も続いている。メンバーの突然の脱退、でんぱ組に救われた2人の少女の加入、そして卒業と継承。
さらに、もふくちゃんによると今年はでんぱ組に新たな展開が待っているという。
それにしても「泥をすすらせる」とは気になる。
以前あった、みりんちゃんの以下のツイートは、同じ文脈のものだろう。
先日、でんぱのこの先の会議がありまして。
— 古川未鈴 (@FurukawaMirin) February 13, 2019
最近じつはネガティブ全開な私でしたが
ちょっと未来が見えた気がします。
ちょっとぐちぐち言ってたのを反省しました。
とりま東名阪、おたのしみに!
自身からはあまり主張しないが、彼女や彼女をとりまく人のインタビューを読むと、みりんちゃんは優れたビジネスセンスと、エンタメに関する鋭い審美眼と嗅覚を持っていると感じさせる。その才能と信念に基づく彼女の要所要所での決断が「私達がやってきた事は間違ってなかった」につながったことは言うまでもない。
その彼女が「未来が見えた気がします」と言ったのだ。
でんぱ組には今まで以上の期待しかない。
次:あとがき
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