今回のテーマはもふくちゃんとの関係です。
目次
もふくちゃんとの出会い
みりんちゃんは当時のアキバの有名人だった。今でもネットを少し検索すると、当時のみりんちゃんの目立ち具合は確認できる。
前後関係は不明だが*1、ディアステージ立ち上げと並行してインタビューの文字書きおこしのバイトで2人は机を並べていたそうだ。職場はおそらくubiqだろう。
いずれにせよ11年以上の付き合いとなる。
プロデューサーとしてのもふくちゃん
ディアステージのみりんちゃんは、ディアステージの社長になったもふくちゃんに、アイドルユニットをやりたいという意思を伝え続けた。その強い意志に根負けして、重い腰を上げてでんぱ組を立ち上げた。
もふくちゃん自身もハロヲタであり、自身の理想とするアイドル像に沿った、しかも電波ソングを歌うアイドルをプロデュースしたい、という野望を持っていた。意地の悪い見方をすれば、自身のコンセプトを実現するために、みりんちゃんの夢を利用したことになる。
一方、みりんちゃん自身は前述の「でんぱブック」のインタビューにあるように
私はもともと電波ソングが好きじゃないというか。SPEEDさんのようなダンスヴォーカルユニットがほんとにやりたかったから
という気持ちを持っていたが、彼女のビジネスセンスは、自身の嗜好よりも、ニッチ戦略を採ることを受け容れた。
でも、1個支えだったのが、もふくちゃんが「電波ソングを歌うアイドルユニットは無いから、そこは良いんじゃない?」って言ってて、確かに無いなって思ったんですよ。だから目の付け所はもしかしたら良いのかもと思って、信じてやろうみたいな感じだったかな
みりんちゃんは、もふくちゃんのセンスの良さを認めており、それが賭けに値する唯一の手札だったのだろう。
もちろん、前回記載したように自身の声質やスキルとのマッチングを冷静に判断したこともその理由だろう。
自身の理想のアイドルユニットを作るため、もふくちゃんは様々な取り組みや指導をし、それはメンバー、特にみりんちゃんに試練となった。前回の歌割の件もそうだ。
その中でも、彼女が最も堪えた試練の一つが、りさちーをリーダーに指名したときだろう*2。自身がグループを引っ張ってきたという自負のあるみりんちゃんには相当ショックだったようだ*3。
私にはみんなを引っ張るという器はありませんでした
その結果が昨日のでんぱーてぃにも出てたと思います
雨に打たれた子犬のようにうなだれている姿が目に浮かび、思わず感情移入してしまう。
このときのことは「でんぱの神神」でメンバーが鍋を囲んでトークする回で取り上げられている。まろやかな狂気2 夢眠ねむ遺言集でも記載があるが、やはり動画の威力は大きい。まだの人は必見だ。ねむさんのアガペーも見られる。
他にも、個性がないだの、私服がダサいだの、自分のことしか考えていないだの厳しい指導を受け続けてきた。しかし、みりんちゃんはアイドルとして成功するために必要なことと納得した上で受け入れていった。初期の映像と現在を比べると、その成果は明らかだ。
相互のリスペクト
もふくちゃんと二人三脚ででんぱ組を進めていくも、恐ろしいほど人気はなかったようだ。2.5次元というコンセプトの生まれていない当時、3次元のアイドルとも2次元のキャラクターとも違う中途半端な存在。アイドルファンからもアニメファンからも認められなかった。
アイドルのフェスに参加しても、他のアイドルに対するような歓声はなく、罵声さえ飛び交う始末。その状況に耐えられずもふくちゃんはつい弱音を吐く。そのときの言葉を吉田豪氏による、もふくちゃんインタビューから引用する。
その落差がすごくて私すごい落ち込んでたんです。
”未鈴ちゃん、もうダメかも‥‥”みたいな。
メンバーの前で(笑)。
さらには、「電波ソングを歌うアイドルユニット」という自身の考案したコンセプトにも自信を失う。そのときのみりんちゃんの言ったのが今回取り上げる言葉だ。
その時私が、"ふつうのアイドルっぽい歌を作ったほうがいいのかな“とか日和ってたら、"何言ってんの?この方向で行け!”とか、すごい未鈴ちゃんにそれを言われて、"わかった未鈴、私、頑張る!“みたいな。
誇張もあるだろが、以前も述べたみりんちゃんの持ち味である、ブレない意思、折れない心、なにくそという根性が見事に表れている。
このときの状況に関する、みりんちゃんの見解は寡聞にして知らないが、みりんちゃんとしては、もふくちゃんのセンスを信じてここまで来たのに、ここでブレてはこれまでの苦労は無駄になる、という気持ちだったのだろう。
ここに見る二人の関係性がまたすばらしい。一般的なアイドルと運営の関係というより、一種のビジネスパートナーのような関係だ。相互にリスペクトし、共通の、そして自身の夢を叶えるための相棒としての存在だと感じる。
もふくちゃんの、みりんちゃんへのリスペクトは以下のインタビューによく表れている。有料コンテンツのため、引用は控えるが(念のため)、みりんちゃんの人間力をべた褒めしている*4。
最近公開された以下の対談記事もよい。泥水を啜り、ぶつかりあいながら地下からの武道館という快挙を成し遂げた2人ならではのやり取り。本当に尊い。後光がさすほどである。
この対談を読んで、以前書いた記事の最後の言葉をもう一度。
でんぱ組には今まで以上の期待しかない。
まだ、新曲は聴いていませんけどね(笑)。
*1:2020.03.25追記) ディアステージ開店後とのこと
*2:もふくちゃんがりさちーをリーダーに選んだ理由についてはアイドルとヲタク大研究読本 ♯拡散希望 【ヲタククエストすごろくポスター付き】のインタビューに詳しい。なお、このインタビュー後記がいい。最もみりんちゃんに近い魂を持つのはぺろりんだと思う
*3:2019/12/10追記)
ここで気になるのがZepp Tokyoワンマン独白での「りさちゃん、リーダーを押しつけてごめんね」だ。みりんちゃんの言動を過去から現在まで追ってきたが、その発言の誠実さ、ブレなさには驚くばかりだ。多くの発言の中で疑問符が沸くのはこれだけであり、そういう意味でこの発言の真意が知りたい。
*4:このシリーズ中のみりんちゃんのインタビューは必見である。みりんちゃんのでんぱ組初期に至るまでの過程や心情が語られているが、ここまで赤裸々なものは他にないのではないか?これを読むと、独白や「でんぱ組をあきらめません」などのみりんちゃんの名言をより深く味わうことができる。