今回は、音色に大きく影響を与える倍音構成(特に低次)について観察した結果を報告します。
時間のない方は「まとめ」だけでも読んでください。
まとめ
- えいたその声は3~5倍音が強く出ていることが確認された。他のメンバーと比べてもそれは顕著である。
目次
予備分析の結果 (2) 倍音構成
次に低次の倍音構成に着目してスペクトログラムを観察する。
低次倍音構成
楽器では、倍音構成が、各楽器固有の音色を形成することが知られており、例えばクラリネットは主に奇数次の倍音で構成され、それがクラリネット特有の音色を作り上げている。同様に特徴的な倍音構成がえいたその歌声に見られれば、それは声の秘密を知る手掛かりになる可能性がある。
被験者eitasoの前回のクロマチック音階発声の図の3000Hz付近までの周波数を拡大して掲載する。わかりやすいように各音程の倍音にガイド用の線を引いた。
観察してすぐわかるように、音程によりばらつきはあるが、全般的に基音や2倍音より3~5倍音の色が赤色、すなわち強い傾向にある。
なお、F#4以降に2倍音が徐々に強くなっていっていることから、800Hz前後にある、母音「あ」の第1フォルマントの影響を受けていることが示唆される。
基音や2倍音より3~5倍音が強いという倍音関係にある楽器として、最初に挙げたクラリネット以外にオーボエやファゴットなどの木管楽器がある。オーボエやファゴットは、それが故に特徴のある音色を持っており、なんとなくえいたその歌声とのイメージに合うのが面白い。
また、3~5倍音というのは音階でいうとC4だとG5、C6、E6であり、Cコードの第2展開形である。言ってみれば、C5を発声すると、Cコードの構成音も同等のレベルで同時に鳴っていることになる。
えいたその歌声は単音でもハモっているように豊かな響きがあるのは、そのせいかもしれない(エフェクタのせいかもしれないが)。
他のメンバ=との比較
参考までに他の被験者の結果も掲載する。いずれも3~5倍音は基音、2倍音と同等以下の強さであり、3~5倍音が飛びぬけているというのは、被験者eitasoの顕著な特徴と考えることができるだろう。
次回予告
前回と今回のスペクトログラムの観察によって、えいたその歌声には次のような特徴があることがわかった。
今回で予備分析を終わり、次回からはこれらの特徴についてもう少し詳しく見て行こう。
分析条件
今回の分析条件は前回と同様である。