弥紀のblog(仮)

アイドル、特にでんぱ組に関する妄想を語ります。twitter(@yaki2019)で記事の正式リリース告知および近況を呟いています。

でんぱ組 物語論(1)3つの物語

タイトル通りの新企画です。全体の目次はこちら

目次

 

はじめに

でんぱ組を知って約2年、ここまで自分を虜にしたアイドルはいない。なぜでんぱ組に惹かれるのか。楽曲、歌声が魅力的なことはもちろんだが、その物語と物語を生みだした彼女たちのキャラクター、そして物語を背景にした彼女たちの言動に引きずりこまれている、そう認めざるを得ない。

でんぱ組の物語としては「マイナスからのスタート」で武道館に到達というサクセスストーリーが有名だが、すでにでんぱ組の物語はそこに留まっていないことはファンの多くが認めるところであろう。

本企画は、2019年末までのでんぱ組の物語を総括して、その魅力を分析するというものである。ファン歴2年のニワカが偉そうに語るがどうか許してほしい。

 

3種類の物語

でんぱ組の物語性は次の3種類の物語に分解できると筆者は考える。

  1. 血沸き肉躍るサクセスストーリー
  2. 各メンバーの成長と成功の物語
  3. メンバー間の友情物語

まずそれぞれについて簡単に説明を加えたい。

 

1. 血沸き肉躍るサクセスストーリー

やはり最初に挙げなければならないのは、グループ全体の血沸き肉躍るサクセスストーリー、そしてその象徴が第1回目の武道館である。

悔しくも筆者はリアルタイムで経験していないが、各種記録を振り返ると一つの祭りだったと言える。その物語の魅力の根源は「水滸伝」に酷似している*1。筆者が考えるその類似点は以下のとおりである。

  • 世に埋もれた、あるいは世から外れた才能達が運命に導かれるように続々と集まり世の中を変えるため暴れまくる*2
  • 登場人物は皆キャラが立ち、その出会いもドラマチック*3

いうまでもなくディアステージ=梁山泊である。

水滸伝は多くの物語に影響を与えているが、その1つが南総里見八犬伝である*4八犬伝に影響を受けた現代の物語はドラゴンボールなど名作ぞろいである。ヒーロー戦隊物、そしてプリキュアもそうだ。

そのストーリーが魅力的なのは当然である。

 

2. 各メンバーの成長と成功の物語

次の物語は各メンバーの成長と成功の物語、その象徴がそれぞれみりんちゃんの結婚えいたそのプリキュア主演声優抜擢だ。

まず前者。アイドルで成功すること(とゲームで勝つこと)にしか興味のなかった、みりんちゃん。それがメンバーや周りのスタッフが向ける愛と情熱、仲間との別離と出会いを通じて自分自身そして人を真に愛することを知る。10年を超えるその過程は一大ビルドゥングスロマンといっていい*5

後者については、「おねえちゃん プリキュアなんだよ」が現実になる日がくるとは、古参ファンでさえ予想していなかったのではないだろうか。えいたその才能と人格、そして過去の不遇ぶりを知っていれば知っているほど、プリキュア声優としての成功は溜飲を下げるものとなる*6

 

3. メンバー間の友情物語

最後に、メンバー間の友情物語である。ここで「友情物語」という少々クサい言葉を使ったのは、単に仲がよいとかではなく、そのエピソードとそのコンテキストを知って胸を熱くするようなドラマ性を表現したかったからである。

上記2つが普遍的な物語であるのに対し、どのメンバー間の関係性が刺さるかは人によると思うが、筆者が挙げたいのは次の3つある*7

  • みりんちゃんとねむさん*8

  • えいたそとねむさん*9

  • もがちゃんとねむさん*10

いずれもねむさんが関わっているのは、ねむさんが天性の共感力を持ち、関係性の結節点であったこと。そして関係性を魅力的に伝えることのできる「優れた語り手」であったからであろう。それゆえ、卒業公演はその関係性の総括となり、天才的な演出とも相俟って感動的だったのだ*11

 

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個々の物語も感動的だが、でんぱ組の物語はこれら3種類の物語が有機的に結びつくことで強い感動に繋がっている。*12

 

その感動をさらに深く真正なものにするのが、でんぱ組ならではの特殊性である。次回以降はその「特殊性」を論ずる。

yaki.hatenablog.jp

脚注

*1:横山水滸伝しか読んでいないが(笑)

*2:メンバーだけでなくスタッフもだ。ファッショナブルなイメージ作りや業界へのアピールに、ふくちゃんを含む「最前ゼロゼロ」の果たした役割は大きい。まだの人は「でんぱブック でんぱ組.inc」、特にファンタジスタ歌麿呂氏のインタビューを是非読んでほしい。漢だよ、アンタは。

*3:2020/08/12追記)でんぱ組の楽曲クリエータの前山田氏がそのことを「でんぱ組.incは伝説の戦士みたいな人たち」と、短い言葉で的確に表現している。
でんぱ組.inc「愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ」インタビュー|今だから歌える愛の形 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

*4:個々のキャラの立ち方は八犬伝の方に近いかもしれない

*5:えいたそがメンバーに心を開いていく過程も感動的だ。この成長があったからこそ、プリキュア声優として活躍できたと筆者は確信している。いつか記事にまとめたいと思っているが。。。

*6:えいたそには申し訳ないが、もう少し〇〇(自粛)だったら、早いうちにコメディエンヌとして天下を取っていたと思う。

舞台「ハッピーマーケット!!」で共演したなだぎ武大絶賛や、でんぱの神神で折々に見せるコメディのセンス(名セリフ「布団は一つで十分」は周りの反応からしてアドリブだろう。)から溢れる非凡さからそう感じるのだ。

*7:りさちー、ピンキー、ぺろりん、ねもちゃんのファンの方、ごめんなさい。

*8:拙稿だが以下の記事も参照。

yaki.hatenablog.jp

 

*9:拙稿だが以下の記事も参照。

yaki.hatenablog.jp

 

*10:ねむさんゲスト回の「豪の部屋」での、ねむさんの「もがみ」という呼び方がその関係性を表わしていてエモいのだ。

*11:彼女がどれだけメンバーにとって大事な存在だったかは卒業公演での「あしこな」が象徴している。あのえいたそが抑えきれず目を潤ませ、ピンキーが「私も同じだよ」といった感じでポンと肩を叩き、えいたそが応えるシーン、そしてみりんちゃんが感極まって歌えなくなるシーン。「くちびるキボンヌ」から「あしこな」の流れは本当にずるい。

そして圧巻はみりんちゃんの「でんぱ組になってくれてありがとう」からの「この7人で歌う最後の曲は。。。WWDBEST!」。何度見てもこのシーケンスはエモーショナルだ。

よもや未見の人はいないと思うが、まだの人は是非!

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*12:「2. 各メンバーの成長と成功の物語」を各メンバーの「努力による成長と成功」と読み替えるなら、これら3種類の物語は、週刊少年ジャンプの編集方針である「友情」「努力」「勝利」に対応していることに気づく(順番は丁度逆になっているが)。